観光地域づくり法人(DMO)だからこそ重要な「地域広報」という視点

 はじめまして。一般社団法人地域人財基盤(以下、地域人財基盤)の広報を担当している宮澤と申します。「広報」とは、その組織のさまざまなステークホルダーと良好な関係を構築するための活動を指しており、ある程度の規模をもつ企業となると専門の部署もあるほど重要な仕事ですが、地域のDMOや観光協会といった少数精鋭のメンバーで回している組織では「正直そこまで手が回らないよ…」いった声も多く聞こえてきます。ですが、地域全体を巻き込んだ観光地域づくりを推進していく存在であるDMOこそ、広報は非常に重要な役割を持っており、欠かすことはできません。本日はそんな、「地域広報」という役割の重要性と、その活動の事例を分かりやすくご説明いたします。 

DMOにこそ「広報」が必要な理由 

広報とは、組織の活動方針や事業内容、実績、社会への貢献などをさまざまなステークホルダーに伝える仕事です。その際、ただ「知ってもらう」だけではなく、「組織のステークホルダーと良好な関係を築くこと」が広報活動の目的である点を理解することが大切です。

それを前提としつつ、DMOとしての広報は言わば「社内広報」のように、ステークホルダー全体の機運を高め、地域に属する自治体や事業者、住民が一丸となって観光地域づくりに参加したくなるような空気作りにも繋がります。そうなることで、多様な関係者の合意形成を図るための関係性が構築され、DMOとしての事業推進もスムーズになるでしょう。 

観光庁の定義で、DMOとは“地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人”とあるように、地域にある観光資源を最大限活かし、地域全体として観光地域づくりを推進していく、旗振り役がDMOです。では、もしDMOが広報活動を怠るとどうなるでしょう? 

広報を行わないことは、DMOの活動を知ってもらう機会を逃すことにつながります。結果として、関係者間の合意形成や事業者連携が進まなくなり、地域一体の観光地域づくり(=地域集客活動)そのものが妨げられてしまいます。せっかくDMOとして日々活動しているにも関わらず、それを知られていないが故に、将来の観光地としての事業機会が損なわれてしまうことを考えると、広報活動の重要性はご理解いただけるかと思います。さらに、DMOに対する地域事業者や自治体からの信頼や期待感も損なわれ、「DMOは活動も見えないし、成果も上がっていない」などと、地域から厳しい声が上がったりします。しかしこうした状況に陥ってしまっているDMOは意外と多いのが実情です。 

地域広報、何をやるべきか? 

では、ステークホルダーに対する広報活動を始めるに当たって、一体何から手をつけるべきなのでしょう。以下が「最初の一歩目」として、トライしたい広報活動です。 

  1. DMOの活動実績の可視化 
  2. ステークホルダーへの有益な情報の提供 
  3. ステークホルダーとの相互理解の機会 
  4. 媒体(メディア)を介したアプローチ 
  1. DMOの活動実績の可視化

例えば、インバウンドの獲得に向けたプロモーション活動(海外セールスや展示会への出展など)など、地域への誘客につながることを目的とした活動は、DMOとしての立派な活動実績です。観光地としての魅力をしっかりと多くの人々に伝えるための取り組みは「活動レポート」という形で当日の様子も交えながら伝えることで、普段なかなか見えづらいDMOの活動を伝えることができます。 

そのほか、DMOが調査した地域の観光データも事業者にとっては非常に有益な情報になります。自分たちの地域に訪れる人々の傾向やニーズなどを地域の観光事業者に伝えることで、観光客に向けたサービスの向上や、新たな企画が生まれるチャンスにも繋がりますので、観光データなどの地域に関するレポートは積極的に開示していきましょう(観光データ作成に関するご相談も承ります!) 

2.ステークホルダーへの有益な情報の提供 

DMOが作成する地域の観光データのほか、観光庁が行っている補助金事業情報も地域の観光事業者にとっては非常に重要なサポートです。それらは公募で募っているケースがほとんどですので、観光庁から最新の事業募集案内が出た場合は、有益情報として地域事業者にお知らせをすることも大切です。 

また、補助金を活用して地域の事業者が取り組んだ優良事例の共有も、率先してDMOが発信していきたい内容です。その地域の観光にまつわる有益な情報は余すことなく事業者に届けるぞ!というつもりで、日々の情報収集を疎かにしないようにしましょう。 

3.ステークホルダーとの相互理解の機会 

冒頭にも書いた通り、地域広報の目的は「ステークホルダーと良好な関係を築くこと」です。そのための広報的アクションとして、DMOからの一方的な発信だけにとどまらず、事業者や地域の方々からの声をキャッチ出来るような意見交換の場や交流の機会を作ることも地域広報においては重要な役割の一つです。日々観光客と密に触れ合う事業者たちの声は、観光地域づくりを前進させるうえでは非常に貴重ですし、事業者の声を聞く姿勢を見せることは、DMOとステークホルダーの信頼関係を構築させる上で大切な心構えとして覚えておきましょう。 

4.媒体(メディア)を介したアプローチ 

最後に、広報の要となるメディアとのリレーションについてお話しします。一般的には、地域のイベントや事業のお知らせなど、広く周知させたいニュースや、メディアにとって価値のある情報はプレスリリースなどの配信サービスを使ってニュースを配信したり、その地域にある新聞社が加入している記者クラブへのニュースの投げ込みを行います。

それに加え、日頃から地元の記者や出版社の担当者と良好な関係性を構築しておくことで、その媒体が欲しい(取り上げやすい)情報はどういったものなのかをヒアリングしておくことで、結果的にこちら側が届けたい情報を取り上げてもらいやすくもなるのです。 

ただ、地域発の情報を届けるための発信媒体は、時代と共に大きく変化しています。以前は、テレビや新聞といったメディアが、老若男女すべてに向けた有効なアプローチとして主流でした。しかし、近年ではSNSやアプリの普及により、マスメディアの影響力は弱まりつつあります。同時に、InstagramやYouTubeなどで活躍するインフルエンサーと呼ばれる「信頼できる個人」の発信が、人々の行動を促す大きな力となっています。その意味では「DMOの職員」そのものもメディアと言えるのかもしれません。

このような時代の変化を踏まえ、オールドメディアだけに頼るのではなく、常に最新の手法を取り入れることが重要です。時代に即した発信を続けることで、取り残されることなく、人々にとって価値ある情報を届けられるでしょう。 

DMOにとって地域広報は重要な業務の一つ 

以上が、DMOに重要な地域広報で出来る取り組みです。ここで挙げたことはあくまでも基本的な取り組みとしての一部であり、工夫を凝らした取り組みを挙げればきりがありません。地域で観光地域づくりに携わる方々であれば、それぞれのフェーズによって課題感や、やりたいことも異なると思います。そうした課題を一つ一つ解決しながら前進し続けることで、地域一体で観光地域づくりが進んでいきます。DMOとして地域事業者との関係性に課題感がある、発信をもっと強化して地域に人を呼び込みたいなど、お困りごとがありましたら遠慮なく当社までご連絡ください。 

宮澤 愛実(一社)地域人財基盤 マネージャー
大手人材広告会社にて大学生向けのwebメディアの企画・編集のほか、イベント司会などを経て東証プライム上場の大手M&A仲介会社の広報として従事。2024年3月より現職。自社広報として広報物の制作やコンテンツ開発のほか、DMOの広報戦略づくりや広報活動の実行支援を行う。